親子丼

_和風,,米類,丼もの

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親子丼

丼物の王道といえばこれ。

1976年、ソビエト連邦の現役将校ヴィクトル・イワノビッチ・ベレンコ中尉は最新鋭戦闘機であったMig-25で函館空港に強行着陸してアメリカへの亡命を求めた。彼は匿われた湯の川グランドホテルで出された親子丼に感動し、「こんなに美味いものは食べた事がない」と涙を流したという。

1891年 – 明治24年に鳥料理専門店「玉ひで」の五代目当主の妻「山田とく」が考案した料理らしい。この年、日本を訪問中のロシア帝国の皇太子ニコライ(後のニコライ2世)が、滋賀県大津市で警備の巡査・津田三蔵に突然斬りかかられ負傷した大津事件が発生している。

なんとなくロシアに縁がある料理らしいが、もちろんロシアとはまったく関係がないと思う。
卵とじを丼物にするところはシャコの卵とじを丼物にしたという品川飯あたりからの応用かもしれない。
ともかく親子丼は美味い。半熟の卵と鶏肉が絡まり、割り下が染み込んだ飯が蒸れて、三つ葉が香る。その全てを一つに合わせるのが最高の味をひき出すコツでは無いかと思う。
コミックイブニングに連載していた「おせん」というグルメ漫画に親子丼で重要なのは蒸らし時間である旨のことが描かれていた。なるほど丼物というのは丼の中で蒸らす事によって完成する料理だと得心がゆく。
蒸らし時間を考慮してレシピを考えてみる。
蒸らすとなると割り下は飯に負けない濃い味付けがいいだろう。玉ねぎを入れることもあるようだが、これは玉ねぎの酵素で鶏肉を柔らかくする工夫だと思える。しかし味付けとしても食感としても邪魔に感じる。鶏肉の煮込み時間を短縮することで柔らかく仕上げ、玉ねぎを排除する。割り下を濃くすると鶏肉の味付けにはいいが、鶏の出汁が割り下にあまり繁栄されない。この辺のバランスは微妙な気がするが、特に鳥がらスープを足す必要はないように思える。
三つ葉はもちろん火を通し過ぎると香りが失われる。
鶏、卵、三つ葉、全て火を通し過ぎないようにして丼の中で蒸らす。けっこうめんどい。

丼は温めておく。
卵は室温、三つ葉は葉と茎をわけて茎を刻んでおく。飯は炊き立てを使う。
鶏肉は繊維に垂直にに5mm厚程度の厚さで切る。
親子丼において、全ての具材の主張は曖昧である。それは渾沌と混じりあって一体を成す物であり、鶏肉も余計な主張はしない方がいい。

鶏肉を沸騰した割り下の中で5分通り火を通し、味を馴染ませる。
卵を割りほぐしておく。
三つ葉の茎を投入、ひと混ぜして卵も入れる。 このとき丼に飯を入れてもらう。
すぐに丼に鍋の中身を乗せ、残りの三つ葉を散らし、蓋をしめ、布に包んで充分に蒸らす。

炊き上がった飯に三つ葉を混ぜ込んでから丼にしても美味しいかもしれない。次回に試してみよう。